岐阜の酷道を行く
岐阜の酷道を行く
こんにちは、岐阜大学自動車部です。
今回のコラムは、いつもとは違って、自動車に関する技術ではなく、自動車で踏破することができた道について話したいと思います。
普段私たちが通っている道路には、高速道路、国道、主要地方道、一般県道や市道など、様々な種類があります。
その中でも、「酷道」と呼ばれる道があることはご存知でしょうか?
ちなみに「酷道:こくどう」と読みます。
そう。国道と全く同じ読み方をします。
察しの良い方はもうお気付きですね。
「酷道」とは、国道であるにもかかわらず、走行することが困難な道のことを称します。
![酷道への入り口](/column/img/column/gifu_univ011/img_001.jpg)
酷道への入り口
そもそも皆さんは「国道」にどのようなイメージをお持ちでしょうか。
字の通り、国が管理する道路です。
車線が広く、複数あり、中にはバイパスが整備されているものもあり、走りやすい道であるというイメージだと思います。
確かに大半はその通りです。
しかし、一部についてはその通りではありません。
舗装はボロボロ、道幅は狭い、九十九折れ(ヘアピンカーブ)ばかりといった、走っていて酷いと感じる国道もあります。
そういった道を好んで走行する筆者が、実際に通ったときの写真付きで、岐阜県の酷道を紹介したいと思います。
(1)国道157号線
岐阜県と石川県を結ぶこの国道157号線は、岐阜県と福井県の県境付近が酷道区間として知られています。
![名物「落ちたら死ぬ!!」](/column/img/column/gifu_univ011/img_002.jpg)
名物「落ちたら死ぬ!!」
上の写真に何やら物騒なことが書かれていますね。
「落ちたら死ぬ!!」
これはインパクト絶大です。
この看板は福井方面に向かう途中、岐阜県内の最後の集落を越えた先に現れます。
看板から先の道です。
道幅は狭く、乗用車同士のすれ違いは困難です。
基本的にこの細さが延々と続きます。
また写真では分かりにくいですが、落石が多く、踏まないよう気を付けなければいけません。
おっと。国道である証拠を忘れていましたね。
ボロボロになった標識が国道であることを証明してくれています。
![古びた標識](/column/img/column/gifu_univ011/img_003.jpg)
古びた標識
三角形の下部に、現在地を示す表記がありますが、その根尾村はもう存在しない村です。
こういった時代に取り残されたものが見られることも酷道の醍醐味です。
ガードレールが無く、崖下まで遮るものもないので、落ちたら下の川まで真っ逆さまです。
高低差もあり、これは「落ちたら死ぬ!!」も頷けます。
![道路から崖下を覗く](/column/img/column/gifu_univ011/img_004.jpg)
道路から崖下を覗く
![小さな反射板の設置のみ](/column/img/column/gifu_univ011/img_005.jpg)
小さな反射板の設置のみ
以前転落事故があったようです。
看板が立ててありました。
![この先事故現場!](/column/img/column/gifu_univ011/img_006.jpg)
この先事故現場!
![転落事故現場](/column/img/column/gifu_univ011/img_007.jpg)
転落事故現場
崖の法面もきれいに修繕されていて、過去に崖崩れがあったようにも見えます。
言われなくても、この道でスピードを出す人がいるとは思えません。
![路上河川「洗い越し」](/column/img/column/gifu_univ011/img_008.jpg)
路上河川「洗い越し」
道路に川が流れています。
これは、「洗い越し」と呼ばれるものです。
通常は路面に凹凸を付けて水を流しています。
洗い越しは天候によって水量が変化し、水が枯れているものもあれば、雨によって水量が増しているものもあります。
通過するときは中々の爽快感です。
![温見峠 本巣市と大野市の境](/column/img/column/gifu_univ011/img_009.jpg)
温見峠 本巣市と大野市の境
県境の峠、「温見峠」です。
ここには能郷白山への登山口があり、車が数台止まっていました。
大型車通行不能の看板がありますが、もっと手前にも同じ看板があったような…
福井県に入っても、簡易コンクリート舗装など、しばらく酷道区間は続いて、大野市の麻那姫ダム辺りからは2車線となって快走路に戻ります。
(2)国道417号線(塚林道、冠山林道)
国道417号線は、岐阜県と福井県を結ぶ国道です。
しかしこの国道は地図で見ると繋がっていない区間があります。
その区間は代わりに林道が通っています。
それが「塚林道、冠山林道」です。
(正確には国道指定されていないので酷道とは言えないがご容赦願いたい。)
徳山ダムの左岸をひたすら走ると、トンネルの工事現場につきます。
その脇に一本細い道があり、進んで行くと左の写真の看板が目に見えます。
看板には、ここから先は林道塚線と案内されています。
他の看板は、林道走行時の注意等が書かれています。
![林道の入口を示す看板](/column/img/column/gifu_univ011/img_010.jpg)
林道の入口を示す看板
ギリギリ一車線の道をひたすら進みます。
看板から先はしばらく待避所が無いので、すれ違いにはかなり苦労しました。
路面が陥没している箇所もあり、慎重なハンドルさばきが求められます。
![これでもマシな部分](/column/img/column/gifu_univ011/img_011.jpg)
これでもマシな部分
水と一緒に土砂が流れ込んでいます。
石に気を付けてゆっくり通過します。
流れている水は泥水なので、あまり爽快感が得られません。
![泥で濁った洗い越し](/column/img/column/gifu_univ011/img_012.jpg)
泥で濁った洗い越し
完全に土砂崩れしています。
道を塞いでいなくて助かりました。
落石に気を付け踏まないように通過します。
![土砂崩れ現場](/column/img/column/gifu_univ011/img_013.jpg)
土砂崩れ現場
落石、土砂崩れは酷道が通行止めになる大きな要因となります。
グングンと標高を上げていきます。
車内から谷底を覗くと、引き込まれるような感覚です。
![来た道を振り返る](/column/img/column/gifu_univ011/img_014.jpg)
来た道を振り返る
写真は登ってきた道を振り返ったものです。
崖に沿うように道が造られているので、周りの山々がよく見え、とても良い景観です。
通ってきた道が良く見えます。
今更ですが、ガードレールはほとんど設置されていないので、落ちたら真っ逆さまです。
また、季節がちょうど良かったのか、紅葉が美しく、三脚を立てて写真撮影をしている方も見られました。
![紅葉に見惚れて落ちないように](/column/img/column/gifu_univ011/img_015.jpg)
紅葉に見惚れて落ちないように
冠山峠に到着です。
峠を示す石碑の奥に見える山が冠山です。
ここが岐阜県と福井県の県境です。
![石碑と共に冠山を望む](/column/img/column/gifu_univ011/img_016.jpg)
石碑と共に冠山を望む
こちらの峠も冠山の登山口となっているため、ここに車を止め、山に向かう方が大勢いるようです。
福井県側も、転落事故現場を示す看板、雪でひしゃげたガードレールなど、見どころはたくさんあります。
この林道は通過するというよりか、冠山への入口という要素が強いため、路面状況のわりに、交通量が多めです。
特に秋の休日は峠の駐車スペースが一杯になっています。
また、写真にはありませんが、岐阜県側から進入すると、途中左右に分岐する点があります。
冠山峠を越えて、元の国道417号線にもどるためには、右を選択してください。
左を選択すると、高倉峠という別の峠を越えて、国道476号線と接続します。
![分岐して塚林道を選んだ場合](/column/img/column/gifu_univ011/img_017.jpg)
分岐して塚林道を選んだ場合
![未舗装な道が続く](/column/img/column/gifu_univ011/img_018.jpg)
未舗装な道が続く
こちらの峠も景色は最高で、一部区間はダートもあり楽しい道です!
(3)国道471、472号線
次は飛騨地方の酷道です。
岐阜県と富山県を結ぶ国道ですが、わざわざこのルートを選んで通る方はかなりの物好きですね。
それほどにこの酷道はハードです!
![岐阜県側最後の集落](/column/img/column/gifu_univ011/img_019.jpg)
岐阜県側最後の集落
酷道区間の入口である飛騨市河合町です。
細い道で集落を抜けていきます。
国道を示す標識が二つ縦に並んでいます。
これは二つの国道が重複していることを示しています。
大型車通行不能の看板も立っています。
![左側は小さな川あり](/column/img/column/gifu_univ011/img_020.jpg)
左側は小さな川あり
先ほどの標識のある集落から少し越えた地点です。
タイヤが踏まない中央部には草が生えていました。
道幅も細く、最初は道を間違えたかな?と思いました。
![轍のアスファルトをなぞって進む](/column/img/column/gifu_univ011/img_021.jpg)
轍のアスファルトをなぞって進む
もはや道が自然に帰っています。
轍以外は苔むし、舗装も心許なくガタガタです。
本当にこの道が国道なのでしょうか?
ますます不安になります。
(筆者の車にはカーナビが付いてないので現在地がわからない)
![立派な標識](/column/img/column/gifu_univ011/img_022.jpg)
立派な標識
この標識を見たときは本当にホッとしました。
しっかりとこの道が国道であることを主張しています。
ここは豪雪地帯なので、冬季に積もった雪が471号の標識を潰しています。
九十九折りを繰り返し、標高を上げていきます。
当然のごとく、ガードレールはなく、「落ちたら死ぬ!!」の状態です。
また、路面がコンクリートの簡易舗装となっている区間は、通過時の振動が大きいので、乗り心地が良くないです。スピードを落として通過します。
![恒例の「落ちたら死ぬ」箇所](/column/img/column/gifu_univ011/img_023.jpg)
恒例の「落ちたら死ぬ」箇所
![アスファルト舗装でもボロボロになっている](/column/img/column/gifu_univ011/img_024.jpg)
アスファルト舗装でもボロボロになっている
標高1220mの楢峠を越えて、富山・岐阜県道34号線との交差点?にたどり着きました。
まるで国道と県道の交差点には見えません。
国道は看板の通り、V字にカーブします。
V字に曲がる際、路面の高低差に気が付かなかったので、車の底を擦ってしまいました…
![南砺60km 富山52km](/column/img/column/gifu_univ011/img_025.jpg)
↖南砺60km ↘富山52km
道路の両端が地面であると、走りやすい道という感覚になってきます。
実際、県道との分岐を越えると、これまでの険しさが少し穏やかになった感じがします。
![転落の心配はありません!](/column/img/column/gifu_univ011/img_026.jpg)
転落の心配はありません!
富山県に入りました。
通行規制のためのゲートが設置してあります。
![ようやく富山県](/column/img/column/gifu_univ011/img_027.jpg)
ようやく富山県
ここは県庁所在地である富山市ですが、市街地とは遠くかけ離れています。
![垂直に切り立つ崖](/column/img/column/gifu_univ011/img_028.jpg)
垂直に切り立つ崖
富山県側も相変わらず酷道は続きます。
九十九折りは岐阜県側と比べ少ないものの、露頭が多いためか、落石が目立ちました
![通ったときは小雨でした](/column/img/column/gifu_univ011/img_029.jpg)
通ったときは小雨でした
峠区間を終え、富山県側の最初の集落まで降りて来ました。
ここにも通行規制のゲートがありました。
今まで長く重複していた国道471号線と472号線は、その後分岐しそれぞれ南砺方面、八尾方面へと道は続いて行きます。
どちらの道を選んでも、まだまだ山岳地帯なので快走路とは言えません。
いかがでしょうか?
酷道とはどのようなものか感じ取れましたか?
通ってみたくなりましたか?
筆者は好奇心から、目的地に着くために酷道をわざわざ選ぶ、酷道を通る目的だけのドライブもします。
酷道を通っているときは、
「一体俺は何をしているんだ・・・」
「早く人里に降りたい・・・」
と後悔してしまうことが大半ですが、いざ通り過ぎてみると、謎の達成感が得られ、
「今度はどこの酷道を通ろうか」
「逆方向に走ってみよう」
などと思ってしまうものです。
今回は主に岐阜県の酷道を紹介しましたが、他にも日本各地に酷道はたくさんあります。
読者のみなさんも是非通ってみてはいかがでしょうか?
もしそうは思わなくとも、このような道もあるのだということを少しでも知って頂けたら幸いです。
~ 最後に ~
言わずもがなですが、酷道を走行する際は安全第一でお願いします。
携帯電話は基本的に圏外ですので、助けを呼べません。
深い山の中だと、野生の動物が出没するので注意が必要です。
![酷道で出会った野生の動物](/column/img/column/gifu_univ011/img_030.jpg)
酷道で出会った野生の動物
天候や路面状況、冬季閉鎖で通行止めになっている場合は大人しく引き返し、通行可能の場合でも、無理だと思ったらUターンして戻る勇気も大事です。
筆者も最初は「落ちたら死ぬ!!」の看板にビビってしまい、そこで引き返していました。
インターネットで道路情報が簡単に調べられるので、事前に調べてから通るといいでしょう。
また酷道ドライブに使用する車両の多少のキズは覚悟しておき、キズがついてもショックの小さい車で行くことをオススメします。
また、この記事を読んで、酷道を走行し何らかの問題が生じても、筆者は責任を負いかねます。
では皆さまも、楽しい酷道ライフを!
(執筆:岐阜大学自動車部)
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