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F1パイロットもやってる!?シミュレーター訓練

こんにちは。広島大学自動車部です。
今回は自動車の運転の練習、特にスポーツ走行の練習について書きます。

本題に入る前に、大学の自動車部について知って欲しいことがあります。
大学の自動車部では基本的に、大学に入学してから免許を取得し、初めて自動車に乗り、初めてスポーツ走行をするという完全な初心者からスタートするのが一般的です。

その初心者からスタートして、卒業する4年生までに自分の技術を高め、大会での好成績を目指すというのが大学の自動車部の活動内容です。
この大会とはダートトライアルやジムカーナといったスピード競技が主で(そうでないものもありますが省略します)、大学自動車部員の目指す運転技術向上とは、基本的にスポーツ走行の技術、つまり「車をより速く走らせる技術」のことを指します。

今回はこの「車をより速く走る技術」を向上させるにはレースゲーム、レーシングシミュレーターが有効だ、という話をします。

ステアリング型コントローラーと画面

ステアリング型コントローラーと画面

筆者はレースゲームの大会でオフラインの全国大会に出場したり、全国学生ダートトライアル選手権で広島大学が団体優勝したとき選手として出場させていただいていたりしており、一応ゲームも実際の車の運転も下手ではないという視点から、大変偉そうではありますが書いていきたいと思います。

最近ではレースゲーム、もしくはレーシングシミュレーターが運転の上達には全く役に立たないと言う人は、かなり少なくなってきているように感じます。
どの程度、実際の車の運転の役に立つかという点では意見が分かれるところですが、多くの大学自動車部においてはこのバーチャル世界で行う、車の運転が実際の車の運転の上達に役に立つという認識が広まっているように感じます。
筆者も、その通りであると考えます。

しかし、どの程度有効であるということについては認識の個人差が非常に大きいと感じることが多いです。
ゲームでの練習は多少の参考にはなるけれども、それよりもたくさん実際の車で練習すべきである、という認識を持たれている方が非常に多いのではないでしょうか。

もちろん練習と上達の成果を実際の車で披露するのですから、実際の車での練習が最も良いことは間違いないのですが、あまりにもゲームでの練習の有用性が軽視されているのではないかと筆者は感じています。
次には、どのような点でゲームが運転の練習に有効であるか、書いていきます。

今回はステアリングとペダルに別れた、ステアリング型コントローラーを使用した場合を前提にしています。

レースゲームのメリットは第一にお金がかからないことです。
モータースポーツはとにかくお金のかかるスポーツです。
競技を始めるのにも、競技会に出場するにも、練習をするにも、とにかくお金がかかってしまいます。
無尽蔵にお金のある場合を除いて、限られたお金の中でモータースポーツをしていく、特にお金のない学生がモータースポーツをするには、いかに上手にお金を使っていくかが重要になってきます。

その中で練習をしても、事故を起こしてもお金のかからないゲームでの練習は非常に有効なのです。
また、お金がかからないためによりたくさんの時間練習することができます。
これも4年という限られた期間で成果を出す必要のある学生の競技においては大きなメリットであると言えでしょう。

第二のメリットとして、自動車の性能差のない状態で他人と比較することができる点です。
モータースポーツというのは、ドライバーの技術とともに自動車の性能も競う競技であるので、車両の性能差があることは仕方がないというか当然のことであるのですが、ゲームでは他人と純粋に運転の違いだけを比較することができます。

運転の上手な人を参考にして全く同じことをすれば自分も上手に走れるし、他人の運転と比較するときに車両の特性というフィルター無しで見ることができるというのは、大きなメリットであると言えると思います。

このようなメリットは特別考えるのが難しいことではなくて、言われなくてもわかっているという学生ばかりでしょう。
それでもなおゲームでの練習へあまり積極的ではない学生が多いのは、筆者の周りでは「実際の車と違う部分、リアルではない部分があり、実際の車の運転に十分に活かすことができない」という考えや、そもそもあまり普段からゲームへの親しみがなく、ゲームやるという習慣がないので興味がない、といった理由で積極的ではないでしょう。

まず、初心者が練習を始めたとき、スポーツ走行の基礎から学んでいくことになりますが、これらはゲームでも十分に学ぶことができるます。

例えば、アウト・イン・アウトのようなライン取りはゲームで完全に練習ができる内容でしょう。
最近のゲームでは、レーザースキャンなどで測定したデータをもとにコースを収録するなど、ほぼ本物と同じサーキットが再現されています。

また、実際の車で走る予定のサーキット等が収録されていなくても、ゲームに収録された多数のコースで正しいライン取りを学ぶことでライン取りの基礎は身につき、他のコースでそれを応用する引き出しも養うことができます。

また、状況によってどのようなギアを選択するか、基本から外れたラインをあえて選択するのはどういう場合か、といったスポーツ走行での基礎的な学ぶべきことについては、ゲームでも実際の車を使用する場合とは同じように学ぶことができるのです。

また、ここで強く言いたいのは、「最近のゲームは非常にリアルに近くなっている」ということです。
最近のゲームはリアルであるということについては、ゲームのデモ映像等を見たことのある方はレースの中継映像とほとんど変わらない映像がゲームの中で再現されていることに気づくでしょう。

そして今回注目してほしいのは、外から見た車の動きが現実の車と殆ど変わらないということです。

「レースゲームがリアルではない」と言われる場合によく言われることの一つとして運転時のGをはじめとした「運転する感覚が実際の車と異なる」ということがあります。
確かにGの表現は大掛かりな機械でもリアルに再現するのは難しく、また、ステアリングやペダルの操作感も実際の車と同じように再現できていないかもしれません。

しかし、ドライバーの操作感はともかく、操作された車はコース上で“ほぼリアル”な動きになっていることが重要です。
これは自動車の物理演算については基本的には計算によるものであり、コンピューターの得意分野であるのでこの車の動きはほぼ現実と同じであると考えても問題ないです。

つまり、「どのように操作すると速いのか」を検証するにはやや疑問が残るものの、「どのような車の動きが速さに繋がるのか」を見ることができるのです。

車の運転は操作によって車を動かしていきますが、結果としてどのように車が動くかを重視するということです。
車がコースのどこを走るか、その時車がどの方向を向いてどのようなスピードとベクトルで車が動いているか、という車の動きを検討して、その動きがゲーム上で速いならば、それと同じ動きが実際の車でも同様に速いと言えるのです。

この操作と車の動きという結果を得ることの違いというのは、初心者が上達していくのに重要だと筆者は考えています。
初心者が練習していく上で上手な人の操作を真似しようとするということ良いことです。

しかし、同じ操作をしようとすることは重要ではないと筆者は考えていて、「どのような操作をすれば上手な人と同じような車の動きを得られるか」が上達のへの近道なのです。
この上手な車の動きを得る過程はステアリングとペダルを使用した試行錯誤になり、様々な操作を試して工夫していくことになります。
操作に対する車の動きを掴むことができていれば、多少の操作感の違いもあってもゲームでも実際の車でも同じ方法で上達していくことができるのです。

高精度な動きを再現するシミュレーター

高精度な動きを再現するシミュレーター

言い訳がましく聞こえるかもしれませんが、実際の車でも車によって特性や操作感が異なります。
また、運転上手な人は、様々な車を柔軟に乗りこなすことができる引き出しをたくさん持っています。
ゲームでの運転は、実際の車の特性の違いとはちょっと離れた特殊な運転ですが、操作感が全く違うとは言えないレベルの再現度になってきています。
たとえば、ゲーム上でなるべくスムーズに走ろうとして操作に気をつける、というような上達過程は、実際の運転の上達過程と同じように段階を踏んでいるのです。

また、このようなゲームでの運転を続けていくと、スポーツ走行をしながらも余裕を持ってゲームの運転ができます。
この余裕を持つことがさらなる上達に繋がります。「考えながら走れ」というアドバイスは初心者へのアドバイスとして定番です。

これはどういうことかと言うと、どうすれば速く走れるのか、どうすればもっと速くなるのかを考えながら走れということです。
初心者がスポーツ走行をするとき、車の運転に必死で目の前のステアリング操作やペダル操作で精一杯になってしまい、考える余裕がなくなってしまいます。
そのために、「考えながら走れ」とアドバイスがよくされるのですが、ゲームでもステアリング操作、ペダル操作が十分に余裕を持ってできるようになっていれば、実際の車を運転するときも操作が余裕を持った運転につながってゆきます。

また、当然ですがゲームにおいてもどうすれば速く走れるのか考え、試行錯誤することはタイムアップに繋がります。
どのようなラインを走るか、どのような車の動きで走るかといった事を考えながら走ることができればゲームの中でもタイムアップを果たせますし、それと同じことを考えて実際の車を運転すれば現実世界でもタイムアップを果たすことができます。

つまり、「考えながら走れ」という重要なアドバイスを活かす練習をするのにゲームは非常に有効であるのです。

また、このようなゲームが練習になるということを踏まえると、気軽に他人と一緒に同条件で走れるというのも上達に非常に有効な要素になってきます。
自動車運転とは、自分の力で積み上げていく技術です。
運転席は一人しか座ることができないため、手取り足取り教えるということも難しいですよね。

また、運転は感覚による部分が多くを占めていてアドバイスや指導があっても、最後は自分でその感覚を掴まないと、上達しませんからね。
その結果、一人で試行錯誤を重ねていくことになります。

しかし、そのときにオンラインなどで他の人と一緒に走ると、自分と他の人との細かい違いに気づくことができます。
例えば微妙な走行ラインの違いや車の動きの細かい違いなどです。
そういって見た他の人の走り方は非常に高いレベルで参考になります。
そして前述の通り、そうして得たゲームでの走りを実際の車の運転に生かしていくことができます。

さあ、スタートラインです

さあ、スタートラインです

以上、いかにレースゲームが実際のスポーツ走行に有効であるかご理解頂けましたか?
贔屓目な見方や、多少強引な言い方もありますが、これを読んだ方の中に少しでもレースゲームもやってみようという方がいらっしゃれば非常に嬉しいです。

最近のレースゲーム、レーシングシミュレーターについて、「F1レーサーも、シミュレーターで練習している」と、よく言われています。

バーチャル世界での練習は非常に有効だと、F1の世界でも認められているというのは大きな説得力ですよね。

ぜひ、レースゲームで練習してみてください。

以上
(執筆:広島大学自動車部)

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