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学生フォーミュラの車両開発におけるコンセプトの考え方について

横浜国立大学フォーミュラプロジェクト
プロジェクトリーダ 大澤駿太

こんにちは。私は、2019年度横浜国立大学フォーミュラプロジェクトで、チームリーダを務めます、大澤駿太と申します。今回のコラムでは、学生フォーミュラの車両作りにおけるコンセプトの考え方について書きました。

学生フォーミュラとは

まず、学生フォーミュラとは何かを簡単に説明します。静岡県のエコパスタジアムで開催される全日本学生フォーミュラ大会へ出場するために、1年間をかけ、一台のフォーミュラスタイルの小型レーシングカーを設計・製作する活動のことです。

弊チームのマシン

弊チームのマシン

上の写真のような車両を製作します。上の車両は、2019年度の車です。5月に、富士スピードウェイの駐車場で走行会を行っている様子です。

また学生フォーミュラは、日本大会のみならず、中国・アメリカ・ドイツ・イギリスなどでも大会が開かれています。なので、日本大会にも海外のチームが毎年20校ほど参戦します。世界的な大会なので、ルールが全部英語で書かれています。

レーシングカーを製作するのだから、速さを競う大会だと思われがちですが、それだけではありません。学生フォーミュラは、動的審査と静的審査という二つのカテゴリーで点数を競い合います。

審査ポイント

審査ポイント

動的審査は、75mの直線のタイムを競うアクセラレーション100点・旋回のタイムを競うスキッドパッド75点・約1キロの周回のタイムを競うオートクロス125点・約20キロのタイムを競うエンデュランス275点・エンデュランスでの効率を競う燃費100点の計675点で競います。

また、静的審査に含まれる配点は、コスト審査100点・プレゼンテーション審査75点・デザイン審査150点の計325点を占めています。そして、各審査の合計1000点満点で競い合います。近年の大会で、総合優勝するには少なくとも、850点が必要です。車が速いだけのチームでは、総合優勝をすることが出来ないです。

開発コンセプトと車両開発プロセス

では、静的審査で得点をいかにとるのか、という話に入っていきたいと思います。大会のルールでは、学生チームが仮想企業となり、アマチュアサンデーレーサーをターゲットとした車両開発の企画が求められています。

どういうことかといいますと、車両づくりにおいて、ただ他大学の速い車を真似したのではなく、「適切な開発プロセス」を踏み自分達で考えて車両を開発したかどうかを求めているということです。他大学の車両をまねて、動的審査で良い得点をとってもダメです。その車両をどのように考え、どうしてその機能を有しているのかを静的審査で審査員に発表できなければ、得点を得られません。

静的審査で得点を得るために重要なのが、「適切な開発プロセス」です。では、適切な開発プロセスとはなんでしょうか。F1などのモータースポーツ開発では、純粋な速さが求められるため、他チームのいいところを真似ても、速く走れれば、適切な開発プロセスになり得ると思います。

では、市販車の開発に求められるものはなんでしょうか。市場のニーズに適しているかどうか、だと思います。コスト面や機能性・安全性・見た目など、いかに市場のニーズにあった車両を開発できるかどうかが、市販車開発の適切なプロセスではないでしょうか。

プレゼンテーション審査があるため、学生フォーミュラのルールが求めている適切な開発プロセスは、市販車の開発プロセスとかなり近いと考えられます。チームは、市場分析をしてポジショニングやターゲッティングをし、そのターゲットにあった車両のコンセプトを作り、そのニーズに合った機能を優先順位化して車両性能に落とし込んでいくということをしなければなりません。つまり、車両の開発はコンセプトを作ることから始まります。

では、コンセプトとはなんでしょうか。コンセプトとは、①全体を貫く基本的な概念②商品やサービスを新しい視点から捉え、新しい意味づけを与えて、広告の主張とする考え方です。つまり、誰にどんなものを売りたいか、言葉で表現したものです。学生フォーミュラでいうと、今年はどこの開発に力を注いだかを表す言葉だと言えます。

では、例をもってコンセプトについて説明したいと思います。市場分析やニーズから、開発車両のコンセプトを「意のままに操れる車両」と決めたとします。では、「意のままに操れる車両」とはなんでしょうか。ドライバーの入力に対して、車両の応答が一定であることや、予期しない挙動が起こらないことであると考えます。これは仮定で大丈夫です。

次に、ドライバーの入力に対して車両の応答が一定であるとはどういうことだろうか、予期しない挙動が起こらないとはどういうことだろうか、を考える必要があります。ここでは例えば、車両の応答が一定であるとは、ある程度のサスペンション剛性をもっている必要があると考え、予期しない挙動が起こらないとは、旋回のステア特性が一定であることだと考えます。

そして、その考えを実際の数値に落とし込んでいきます。ある程度のサスペンション剛性とはどれくらいだろう。ステア特性を一定にするには、スタティックマージンをどれくらいにしたらいいだろうか、などを考えます。

このコンセプトを実際の数値に落とし込んでいく作業が、もっとも難しい作業になります。チームの過年度データや他大学のデータで彼我比較をしながら、開発車両のあるべきポジションを確認して、数値を決めていきます。(これをポジショニングという。)

それでは、具体的にサスペンション剛性の目標値が、トー変化0.3㎜以内だと決定するとしましょう。次に考えないといけないのは、その目標値を達成する具体的方法です。ダブルウィッシュボーン式にして、ハイキャスターショートトレールレイアウトにして、アームのピポットはどこにして、などを決めていきます。

今は簡略化のため、トー変化量しか決めていませんが、実際はいろいろなパラメータがあるので、コンセプトから導いた優先順位のもと、達成手法を考える必要があります。

下の図は、他大学のタイムと重量の相関表です。他大学のデータなどを目標重量を決めるのに参考にします。

他大学のタイムと重量の相関図

他大学のタイムと重量の相関図

コンセプト会議

コンセプト会議

コンセプト図

コンセプト図

決まったコンセプトと目標値に対し、その達成手法を考えています。私達のチームでは、テクニカルディレクターと各パートのリーダーの3人が主となって、コンセプトを決めています。コンセプトは、少人数で考えたほうが圧倒的にまとまりやすく、一貫したものが作りやすいです。

しかし、そのコンセプトは開発者全員に共有されなければなりません。コンセプトが共有されれば、各部品の考え方が統一され矛盾が出ず、開発者の狙いに沿った車が完成します。

各パートの設計担当者は、コンセプトから求められた目標値を達成するように、詳細部品を設計します。アクセルとブレーキを担当している私は、アクセルでは目標重量とストローク量、ブレーキでは目標重量と目標制動Gがコンセプトから導かれ、達成するように頼まれました。

また、ほかにも定量的では表せなかった項目もコンセプトから導かれます。例えば、ペダルフィーリングの良さや、ペダルのかっこよさ等です。ドライバーの感覚や、外観は定量的に表すことが難しいので、設計も自ずと難しくなります。

車両開発において、そもそもコンセプトがないと、各部品の設計思想が違う方向を向いてしまうことが分かっていただけたでしょうか。学生フォーミュラでは、このような適切なプロセスを通して設計をしたかどうかが審査されます。

さらに学生フォーミュラでは、その設計通りに製作できているのか、目標値通りに製作できているのかということも、審査項目に入っています。各パーツの機能がコンセプトと一致しているどうか、車両全体は目標値にあっているかどうか、あっていない場合はなぜそうなってしまったのか、車両はコンセプトを達成したかどうかを審査員は質問します。

ただコンセプトや目標値にあっていれば、審査で得点がもらえるわけではありません。どのように検証したのかが重要であり、目標値やコンセプトにあっていない場合でも、なぜそうなったのかを説明することが重要です。

具体的な例では、エアロデバイスが分かりやすいと思います。CFD解析をして、旋回中のダウンフォース量が時速50キロで200N出ると結果が出ました。

CFD解析

CFD解析

では、そのCFD解析の計算結果が正しいのかをどう検証したらいいでしょうか。F1などのモータースポーツでは、風洞実験をするのが主流です。学生には、風洞実験の設備を借りるには金銭的に困難な面があります。多くの大学は、リアウイングにタフトをつけ局所的に空気の流れを観察したり、ストロークセンサーを用いて、実測値と解析値の差を調べたりしています。

タフトを付けての実験

タフトを付けての実験

実測値と解析値の差

実測値と解析値の差

まとめ

ただ市場分析をし、ポジショニングやターゲッティングをし、コンセプトを決めるといっても、チームが好きなように車を作るわけにはいきません。学生フォーミュラにはレギュレーションがあり、その枠内に沿った車を設計しなければなりません。そして、動的審査もあるので純粋な速さも求められます。

学生フォーミュラには、モータースポーツさながらに純粋な速さを求められる一方、市販車のような開発プロセスが求められます。この二つは、相反しています。例えば、高額でスピードが速く、運転技術が必要とするスポーツカーのような、動的審査重視の車が誰にでも受けるわけではありません。比較的購入しやすい価格で、安全で、誰でも運転が出来るコンパクトカーように、静的審査重視の車がいいという人もいます。

学生フォーミュラでは、こうした相反する部分を試行錯誤し、最初に掲げたコンセプトに近づけていく事が、大変な所であり面白い所でもあります。私のコラムを読み、学生フォーミュラを初めて知った方などにも、興味を持っていただけたら幸いです。

横浜国立大学フォーミュラプロジェクト
プロジェクトリーダ 大澤駿太

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