ダウンサイジングエンジンとその実態

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すでに一般的な単語として認知されている、「ダウンサイジングエンジン」という言葉。今回はその歴史と実態について書きます。

「ダウンサイジングエンジン凄い!」という話はすでに出尽くしていますが、今回はそうではありません。その実態に迫ります。

ダウンサイジングエンジンとは?

2000年代前半でしょうか、事の発端はドイツの大衆車メーカー、そうあそこです。そのメーカーが提唱し始めたのがこのコンセプト。
例えば2.0Lエンジンが適正な車を、1.4Lの過給エンジンに置き換えるのです。

VWゴルフのダウンサイジングエンジン

VWゴルフのダウンサイジングエンジン

「ダウン」「サイジング」つまりサイズを下げる。より小さなエンジンで、2.0Lのエンジンと同等のトルクを発揮させる。すると機械的な損失の低減や小サイズ化による搭載性が確保出来る。また国によっては税制面で有利にすることができるわけです。

当然ですが2.0Lから1.4Lサイズにエンジンを小さくすると、トルクは低下します。
その低下したトルクを補うのが過給ユニットです。ターボチャージャーやスーパーチャージャー、もしくはその両方を併用することにより、トルクを補うことにしました。

1980~90年代の過給ユニットというのは、パワーを出すことが全てでした。だから燃費は度外視されていました。
カタログ値でリッターあたり8km台、実測では7kmを下回るなんてこともあたりまえでした。当時を知っている方であれば、「ターボ」=「燃費が悪い」というイメージでしたよね。

ところが、1.4L過給ユニットを搭載したその車。カタログ値で14.0kmという数字を叩き出したのです。旧来の過給エンジンでは考えられない事でした。また「馬力」「トルク」「燃費」全て、同時期に販売されていた2.0Lの自然吸気エンジンを上回っていたのです。

ダウンサイジングを可能にする技術

では、どのようにしてその数字を達成したのでしょうか?
その一つは技術の革新です。

VWゴルフのダウンサイジングエンジン
VWゴルフのダウンサイジングエンジン

・直噴
現代の過給エンジンに欠かせない技術の一つに「直噴」という技術があります。それまでは「ポート噴射式」が主流でした。これは空気を吸い込む過程で燃料を混ぜて、混合気としてエンジンシリンダー内に送り込む方式でした。
「ポート噴射式」に対して「直噴」とは、空気だけの状態でシリンダー内に取り込み、シリンダー内に燃料を直接噴霧させる方式です。「直」接「噴」霧するから「直噴」です。

・ ノッキング
直噴というシステムのメリットの一つに、燃料気化時の「気化熱」があります。理科の実験でやった方もいるでしょう。「気化熱」とは、液体が気体へと変わるときに熱を奪う現象の事です。
エンジンのシリンダー内は、ガソリンが常に燃えています。だからとんでもない高温になります。

ところで「ノッキング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?これは高温になったシリンダーに燃料が入り、圧縮され、さらに高温になります。
すると本来燃料を燃やしたいタイミングとは“違う”ところで自然発火してしまうことがあります。これを「ノッキング」と言います。ノッキングはエンジンにとって何一つ良いことがありません。

このノッキングを抑制する対策の一つとして、「シリンダー内の温度を下げる」ことが効果的です。
さて感の良い方ならお気づきでしょうが、ここで「直噴」技術が出てきます。液体である燃料を直接噴霧することにより、気化させ混合気を作りながら高温のシリンダー内の温度を下げることができます。

シリンダー内の温度が下がると、ノッキングに対する耐性が向上します。その結果、ノッキングに直結する高圧縮化や高過給化を実現することが可能となりました。

直噴技術は新しい技術ではありません。ディーゼルエンジンでは基本技術ですし、過去にも乗用車のエンジンに使われたこともありました。
しかし、高圧高温化におけるインジェクターの性能とコスト、また気化しきる前に燃料が燃焼することによるススの発生など、技術面でのデメリットがあり、主流ではありませんでした。

現在では技術の発展により、インジェクターの能力も向上しました。
超高圧で燃料を噴射することで、燃料の気化を促進することができるようになりました。また制御面でも、何段階にも細かく燃料を噴射するなど、緻密な制御を行うことが可能になりました。

以上の理由などにより直噴技術を組み込む事が可能になりました。
その結果エンジンの「高圧縮化」「過給圧の向上」という熱効率を向上させることが可能となったのです。

・高圧縮化
圧縮比は高ければ高いほど高性能と思っていただいて構いません。できるだけ高圧縮に設定したい、しかしノッキングの問題がある。この圧縮比とは「高圧縮」と「ノッキング」のバランスを取って設定されます。

圧縮比は数字で表します。今回例にあげている車種は圧縮比が「9.7」という数字です。これは1980年代の過給エンジンと比べると驚異的な数字です。
世界初の量産過給エンジンを搭載した乗用車は「6.5」程度でした。1980年代の国産過給エンジンでは「8.0」代前半で、「9.0」なんて数字は夢のまた夢でした。
(余談ですが、過去にドイツの高級スポーツカーメーカーは「9.4」という数値を、直噴技術を使用せずに実現しました。空冷ターボエンジンを水冷化するにあたって、従来より1ポイント以上高い数値でした。しかしこれはコストをかけられる車種であること、また自社の技術に対する信頼によるものでした。)

直噴技術を組み込む事により熱効率は向上したわけです。

実用域

そしてもう一つダウンサイジングエンジンを語る上で忘れてはならないのが、「実用域」です。

「実用域においてのトルク」「実用域においての扱いやすさ」などと聞いたことがあるかもしれません。「実」際に使「用」する領「域」、で実用域です。

一般的な乗用車の使い方は、
・ 街中でのストップ&ゴー
・ 60kmhまでの巡航
・ 高速道路にて100kmh程度の巡航
が基本です。
この使い方にエンジンの特性を合わせることにより、実用域において最大限の高効率化を実現しました。

エンジンの出力特性と実用域

エンジンの出力特性と実用域

考えてみれば当たり前の事なんですが、前時代の過給エンジンでは「実用域」はあまり考慮されていませんでした。カタログでの最大馬力やトルクの数値が重要視されていたからです。
「あっちのメーカーが240馬力出したぞ!」
「でそっちは250馬力か!」
「ならばこちらは260馬力だ!」
といった具合です。

アクセル全開で最大馬力を発揮する機会など、街中ではほとんどありませんよね。でも馬力だけはどんどん上昇していきました。低回転はとても眠たいエンジン。
しかし高回転で過給が始まるとパワー炸裂!なエンジンです。これは乗ってみると楽しいですよ。
サーキットで全開にしてみてください。高回転での強烈な加速、二面性を持ったパワー炸裂なエンジンです。

しかし、高回転での馬力を追及した結果、低回転領域は犠牲になります。
実際によく使う領域では物足りない、非常に乗りづらいエンジンとなりました。

しかし現在ではメーカーの考え方も変わりました。

ダウンサイジングエンジンを実現するにあたって、「実用域」を重視しました。
実際に使用する領域に合わせたエンジンを作り、その領域に合わせた過給をする。

例えば可変バルブタイミングなどの技術では、それまでよりは幅広くエンジンの高効率化が可能となりました。しかし万能ではありません。
下から一気にトルクが立ち上がり、上までよどみなく回り続けるエンジンというのは不可能なのです。

高圧縮、高過給圧という技術の進化そして実用域という考え方。
これらが組み合わさった結果、ダウンサイジングエンジンが完成したのです。

ダウンサイジングエンジンの実態

さて、ここまでは長い前置きです。
「ダウンサイジングエンジンとはなんぞや?」という話でした。ここからは、そのダウンサイジングエンジンの実態を解明していきましょう。

これからのキーワードは「実用域」です。

さて、ここに実用域に合わせたターボ過給のダウンサイジングエンジンがあります。
いざ乗ってみましょう。信号からの発進はとてもトルクフル。一気に下から速度が乗り、また巡航においても高燃費を記録します。
当然です、この領域はこのエンジンが得意とする「実用域」です。

ではここからちょっとアクセルを踏み込み、加速しようとします。エンジン回転は上がり、「実用域」から外れます。その途端に何が起きるか?
思ったより「スピードが乗らない加速感」と「燃費の悪化」です。

実際にこの手の車に乗ったか、所有したことがある方は体感されているはずです。
設計された実用域を外れると、燃費もパワーも面白くない状態なのです。

例えば下から湧き上がるトルク。これは小さなタービンを使用して、排気エネルギーが少ない状態からでも、過給が始まります。
発進時や高速での合流など、低回転域でトルクが欲しいときに過給が始まるので、当然トルクは出ます。またエンジンの耐久性的に余力があるので、かなりの高過給圧でガンガン空気を取り込みます。

最近のエンジンでは、最大トルク発生回転数が2000rpm台、というエンジンも珍しくありません。これは街乗りでよく使う低回転域に合わせた作りこみをしているからです。

ではアクセルをさらに踏み続け、中回転から高回転域に入れてみましょう。排気エネルギーは増大し、どんどんタービンを回していきます。しかし低回転域に合わせたタービン、当然小さいのです。
排気エネルギーは増えていきますが、今度はタービンが持つキャパシティを超えてしまいます。

ダウンサイジングエンジンのタービン

ダウンサイジングエンジンのタービン

その結果、タービンを回すはずの排気エネルギーが、エネルギーとして使われることなく排出されます。

エンジンというものは回転が上がれば上がるほど空気を多く吸い込みます。しかしタービンのキャパシティが限界であれば、エンジンが吸い込む空気は増えないのです。

そして低回転の「実用域」に合わせて作りこんであるのは、タービンに限ったことではありません。そもそもエンジン自体のトルク特性も「実用域」に合わせてあります。
「実用域」に合わせたエンジンと、「実用域」で最大限仕事をするタービン。この組み合わせがダウンサイジングエンジンなのです。

つまり、ダウンサイジングエンジンの実態とは、「実用域」は使い勝手が良いが、「実用域を外れる」とイマイチなのです。これはダウンサイジングエンジンのデメリットでもあります。

実用域ではトルクフルなエンジンも、上まで回すとそのトルクフルなイメージのままでは加速しない。踏んでも思った通りに加速しない→さらにアクセルを踏む→なんとかイメージに近い加速をする。思ったよりアクセル量を必要とする=燃料を消費するのです。

瞬間燃費計が付いた車に乗ったことがある方ならわかるとは思うんですが、踏んだ瞬間一気に燃費が落ち込みます。
「えっ、こんなにガソリン使うの?」と驚いた事がある方もいるでしょう。実用域のトルクのイメージと、そこを超えた加速感のイメージが一致しないのです。

しかしこれも当然の事なのです。なぜならこのエンジンは排気量の小さなエンジンなのです。排気量が小さいということは、エンジンとしてのキャパシティが小さい、すなわちゆとりが少ないのです。ゆとりが少ないという事は、いつも限界に近いという事なのです。

小さなエンジンを効率の良い領域で使用する。しかしその領域を外れたら常に限界ギリギリ。これがダウンサイジングエンジンなのです。

では逆に、一昔前の大排気量の高級車をイメージしてください。車自体は重く、そして高級車だからこそのゆとりを持った加速性能が必要ですよね。

その結果、大排気量のエンジンを組み合わせ、つねにゆとりのある走りをします。いざ加速したいという時は、エンジンに余裕があるのでどの領域でも加速できます。
また、踏んだ分だけ加速するという運転のしやすさがあります。当然、燃費は悪くなりますが。

乗り方で燃費は大きく変わる

実際に使ってみると、カタログ燃費大きくズレが生じる事があります。これはエンジンにゆとりがないのが一つの原因と言えます。メーカーとしてはカタログ燃費を良くしたいので、JC08など燃費測定モードで効率のよいエンジンを作ります。

その結果、カタログ燃費に載る領域ではとても燃費のいいエンジン。しかし実際にユーザーが運転すると、高効率ゾーンを外れるのでカタログ通りの燃費にならない。要は実際の使用では「実用域」を外れる事がよくある。だから当然カタログ通りの燃費にならないのです。

しかしエンジンの効率はどんどん向上しています。ユーザー側でも機械に合わせた使い方をすることにより、高効率エンジンのパフォーマンスを最大限発揮できるはずなのです。

またこれからの未来、自動運転技術が発達した世界になります。運転は機械が行うので、最も効率の良い領域から外れることなく走らせる、そういった制御も可能になります。人間が運転するのでは不可能な高燃費を実現することも夢ではないですね。

自動車メーカーがエンジン開発の手を緩めることはありません。だからどんどん進化しています。今後はどんなエンジンが登場するか、非常に楽しみですね。

まとめ

車というのは燃費、効率、それだけが全てじゃないですよね。
サーキットで車のパフォーマンスを最大限発揮するのが好きな人もいれば、ちょっとした普段乗りで車自体の性能を味わうのが好きな人もいます。

そんな車が趣味の方が、もしダウンサイジングエンジンの車を買おうかなと思ったとき。
ふと今までの話を思い出してから試乗してみてください。
また新たな選択肢が見えてくるかもしれません。

(執筆:岐阜大学自動部)

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