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自動車エンジンに未来はあるのか ~クリーンで高効率なHCCIエンジン~

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自動車エンジンに未来はあるのか ~クリーンで高効率なHCCIエンジン~

今回は既存のエンジンに代わる新しいエンジンにスポットを当てゆきます。
昨今の地球温暖化や大気汚染の問題からしばしば自動車用エンジンは苦境に立たされてきました。
排気ガス規制も年々厳しくなり、最近では電気自動車やハイブリッド車のような自動車が発売され、将来的には従来のままのエンジンは無くなるのではないかという予想も色々なところから出ています。
そのため、日本の自動車メーカーのエンジニアや大学の研究者達も新しいエンジンの研究開発に心血を注いでいます。

従来型の自動車用エンジンが無くなる?!

従来型の自動車用エンジンが無くなる?!

そんな新しいエンジンとはどんな物にすべきか、より良い製品を生み出すためにはどうすればいいのかを考え続けているエンジニアや研究者の頑張りを少しでも多くの方に知っていただければ幸いです。
今回は専門用語が多く含まれ少し難しい内容になりますが、かなり噛み砕いて書いて参ります。
各所に補足説明をはさんで脱線しておりますので、もし今回の話を読んでもっとエンジンについて知りたいと思っていただければ著者としても光栄です。

それでは、まず初めになぜこんなに自動車のエンジンは規制の対象になるのか、実際に排気ガスに含まれる有害物質について軽く紹介していこうと思います。

*一酸化炭素(CO)
一酸化炭素とは、炭素が不完全燃焼したものです。
有機物が燃えるとき、物質に含まれる炭素は酸素2個と化合します。
しかし、不完全燃焼になると酸素を2つ取り込むことができず、一酸化炭素を発生してしまいます。
自動車のエンジンはガソリンを燃焼する際、全てのガソリンと燃焼しているわけではなく不完全燃焼を起こし、一酸化炭素を作り出してしまっているのです。

*炭化水素
炭化水素とは、炭素と水素からなる化合物の総称です。
ガソリンや軽油は様々な炭化水素の化合物であり、エンジンの中で燃え切らずに残ると排気ガスの一部として大気へと出ていきます。
これは一酸化炭素と同じで不完全燃焼が起こると発生します。

*窒素酸化物(NOx)
多くの方が有害物質として、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
大気汚染物質としての窒素酸化物は、一酸化窒素と二酸化窒素が主な原因です。
その大部分は一酸化窒素として排出され、大気環境中で酸素やオゾンなどと反応して二酸化窒素になります。
また窒素酸化物は、硫黄酸化物と同様に酸性雨の原因にもなっています。

*粒子状物質(Particulate Matter、 PM)
自動車の排気ガスには、大まかに分けると気体で排出されるものと粒子で排出されるものがあります。
後者を粒子状物質と呼び、粒径の小さなものは大気中に比較的長時間滞留します。
最近世間を騒がせているPM2.5もこの粒子状物質の一つです。
これらは気管支または肺の深部に沈着して呼吸器系に影響を及ぼすと考えられています。
たとえば、ディーゼル車では黒煙が排出されることが知られているでしょう。
こうした黒煙など排気ガス中に含まれる固体や液体成分を総称して粒子状物質と言います。

*二酸化炭素(CO2)
二酸化炭素は、石油や石炭などの炭素化合物が燃焼すると発生します。
温室効果ガスの1つであり、地球温暖化の問題に大きく関係していると考えられています。

*硫黄酸化物(SOx)
硫黄酸化物とは、主に二酸化硫黄と三酸化硫黄を指します。
精製が十分でない石油や低品位の石炭などは硫黄を含んでおり、燃焼によって硫黄酸化物が発生します。
これらは大気汚染や酸性雨の原因の1つとして問題視されています。

このように、排気ガスからは多くの物質が排出されます。
この現状を知ると、自動車の排気ガス規制が年々厳しくなっていくのもうなずけることでしょう。
今回は、色々な有害物質の中でもNOxと呼ばれる大気汚染の原因になっている窒素酸化物に焦点を絞ってゆきます。
前置きが長くなりましたが、今注目されている新しいエンジンが「HCCIエンジン」です。
HCCIとは(Homogeneous-Charge Compression Ignition)日本語で直訳すると、予混合圧縮自着火エンジンと言います。
HCCIは現在実用化に向け研究が進められている未来のエンジンです。
今現在(2016年)では、HCCIエンジン搭載の自動車は販売されていませんが、各国の自動車メーカーが商品化に向けて開発を考えています。
そもそもHCCIとはなんぞや?
と、思われる方が多いと思います。
このエンジンはとても簡単に言ってしまえば、「ガソリンエンジン」と「ディーゼルエンジン」の良いとこ取りのエンジンなのです。
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの仕組みについては過去に紹介されているので、ここでは詳細は割愛させていただきますが、ガソリンエンジンの特徴である予混合気(ガソリンと空気が混ざったもの)をディーゼルエンジンの特徴である圧縮自着火方式(スパークプラグによる着火ではなく圧縮力による着火)で燃焼するといった仕組みになります。
(参考コラム:内燃機の仕組み https://www.hai-sya.com/column/internal_combustion_engine_univ004.html

それぞれのエンジンの特徴をまとめ

それぞれのエンジンの特徴をまとめ

そして、では次にHCCIエンジンの特徴、メリット、デメリットを順に説明してゆきます。
HCCIの最大のメリットは、有害物質であるNOxがほとんど発生せず、熱効率がガソリンエンジンなどと比べ高いため非常にクリーンで高効率なエンジンであるということです。
では、そもそもNOxはどういう条件で発生しやすいのでしょうか?
NOxが発生する要因としては次の2つがあります。
1つ目は、ガソリンなどの燃料が燃焼する際に、
燃料中に含まれている窒素(N)が、
燃焼時に大気中の酸素(O)と結合して生成されるもので、
燃料(fuel)に由来するため“fuel (フューエル)NOx”と呼びます。
これらは燃焼時の酸素濃度が高いほど多く発生します。
2つ目は、燃料などが高温で燃焼する際に、
空気中に含まれている窒素が、
大気中の酸素と反応して生成されるもので、
高温燃焼時の熱(thermal)に由来するため“thermal (サーマル)NOx”と呼びます。
これらは、燃焼時の酸素濃度が高いほど、燃焼温度が高温になるほど発生量が多くなります。
つまりNOxの発生には実は燃料であるガソリンと空気(酸素)の比(正確には空燃比、A/F)とエンジン筒内の燃焼温度がとても重要なカギになります。
この関係を示したのが下のグラフ図です。

有害物質と空燃比のグラフ

有害物質と空燃比のグラフ

このように、不幸にもエンジンにとって理論空燃比付近においてNOxの発生が最大になります。
つまり、エンジンとしての効率を追求すると、一方で有害物質の量も増えてしまうという矛盾が生じます。
じゃあ、NOxの出にくい領域でエンジンを燃やせばいいじゃないの?
と、お考えになる方がおられると思います。

実は1990年代ではガソリンエンジンで理想空燃比よりも薄い領域で燃焼させるエンジンの開発が流行しました。
このように空気の割合の多い領域での燃焼を“希薄燃焼(リーンバーン)”と呼びます。
燃料が薄い希薄領域での燃焼なので、有害物質も少ないし、そもそも燃やす燃料も少ないので燃費も良いということで、ユーザーにも嬉しいということでしたが、実は2016年現在ではほとんど使われていません。

それは、なぜでしょうか?

それは自動車にとって非常に重要な性能の指標の一つである、トルクや馬力が大きく関わっています。
空燃比は発進や停止、アクセル開度など環境によって大きく変化します。
そして、坂などを登るためにアクセルを踏み込んだ時、実はかなり空燃比が濃い領域になるよう、コンピューターが命令を出します。
なぜなら、燃料が燃えないとエネルギーを取り出せないからです。
つまり燃料が希薄な状態での燃焼はトルクが得られず、アクセルを踏んでも加速していってくれないということになります。

今現在実用化されているエンジンは場面により空燃比が変動します。
そして、ユーザーの多くが関心を持つであろう「燃費」という指標は、空燃比が薄い希薄なほど良いですが、加速性能を犠牲にすることになってしまいます。
このように、何時の時代のエンジニアを苦しめ、エンジン性能と環境負荷の低減の両立という事が如何に難しいことなのかお分かり頂けたと思います。

ではHCCIエンジンは、なぜ「NOxの発生しないクリーンなエンジン」と言われているのでしょうか?
それは非常に空燃比の薄い領域で燃焼しているからなのです。
グラフでいえば右端の方のさらに右の領域です。
このような領域では火花点火では燃焼が発生しません。
しかしながら、圧縮比を上げることで、スパークプラグを使用せずともディーゼルエンジンのように自着火し燃焼することが可能となります。
そして、圧縮比が高いということは熱効率(投入した燃料がどれだけ、エネルギーとして仕事をするか)も高くなり、一石二鳥となるわけです。
こんな良い事ずくめのエンジンなら、HCCIエンジンを早く実用化してよ!!
と、いう声があちこちから出てもおかしくありません。

しかしながら、HCCIエンジンには自動車エンジンとして運用するために致命的なデメリットがあります。 それは、運転範囲のせまさです。
現在の自動車に使われているエンジンは運転範囲が広く、アイドリング状態からアクセル全開まで滑らかにエンジンが頑張ってくれます。
しかし、HCCIエンジンは運転できる範囲がせまく、運転範囲を越えてしまうとノッキングなどのエンジンの寿命を縮める非常にやっかいな現象が発生してしまいます。
これでは、発電用に一定の回転数で運転するといった用途に限られてきます。
このことから現在、運転範囲を少しでも広げようということで、
どうすればノッキングを減らせるのか?
や、着火を制御しよう!と、
日夜研究が進められています。

実際にどういう研究が行われているかを少しだけ紹介しましょう。
この装置は急速圧縮装置と呼ばれ、エンジンの圧縮・燃焼過程を再現できる装置です。
この装置を使って様々な条件を設定し燃焼実験を行い、高速度カメラなどで撮影することで研究を進めています。

実験装置です。中々年代物です。

実験装置です。中々年代物です。

エンジンの中を撮影した画像です。

エンジンの中を撮影した画像です。

しかしながら、このエンジンはまだ実用化には至っていませんが、研究は進められ2018年には実用化出来るのではないかという噂も出ています。
現在、電気自動車や水素自動車の波がどんどん近付いております。
しかし、車好きな方は、絶対に電気自動車は乗りたくないと思っておられると思います。
私もその一人であります。
あのエンジン独特の排気音や、エンジン回転数と共に自分の心臓の鼓動も高まっていく楽しさは、電気自動車では味わえない歓びであると信じております。
そんな車好きな方のためが運転を心から楽しめるために、昨今の電気化の流れの中で「HCCIエンジン」は、果たして自動車業界の救世主となれるように私達大学などの研究機関や、自動車メーカーは実用化に向けて必死に努力しているので、これを機にどうか皆様もまだまだエンジンも頑張っているという事を知っていただき、少しでもご自分の愛車に興味を持っていただけると幸いです。

以上、長々と書かせていただきました。お読みいただきありがとうございました。

(岐阜大学自動車部:執筆)

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